第32話 道標

 京極との再会の約束を交わした翌朝、透は人気もまばらな校門前で早朝ミーティングの為に程なく登校してくるであろう滝澤を待っていた。
 「俺のサーブを根性だけで返せると思うなよ」
 昨夜、京極が去り際に残した言葉の意味を、自宅に戻ってから真剣に考えた。察するに、あれは闇雲に強者に挑んだとしても対等に渡り合えるレベルには達しない。もっと頭を使え、と言いたかったに違いない。
 思うような結果の出せなかった今回のバリュエーションと、一球たりともまともな返球をさせてもらえなかった京極との一戦と。出来れば封印しておきたい惨めな敗戦を一つずつ振り返っていくうちに、漠然とだが今の自分に足りないものが見えてきた。
 今まで透は先輩達のプレーを真似する事で力をつけた気になっていた。無論、優れた選手のプレーを参考にするのは悪い事ではないだろう。しかし、それだけでは本当の強さは得られない。
 特に自身の弱点や欠点に目を向けず、放置した状態で練習を重ねても、長所と短所に開きのあるバランスの悪いプレイヤーが出来上がってしまう。荒木との対戦で手も足も出せないまま敗北したのも、その辺りに原因があるはずだ。
 京極の言う通り、この先の道のりを根性だけで進むには限界がある。まずは己の実力を正確に分析した上で、補うべき点を補い、自分の特性に合った効率の良い練習方法を見つけなければならない。
 思案の末にようやく光明を見出した透は、いま抱えている問題をテニス部の先輩である滝澤に相談する事にした。彼はデータ収集、分析、それに沿ったトレーニングプランの作成に関して優れた才を持ち、光陵テニス部の首脳陣でさえ困った時には彼の意見を求める程だと聞いている。蛇の道は蛇。ここは専門家の教えを請うのが一番の解決策だと判断したのである。

 透が校門の前で待っていると、滝澤と唐沢が連れ立ってやって来た。この二人はクラスが同じである上に、テニス部内でも部長を支える参謀的役割を担う立場の所為か、何かと行動を共にする機会が多かった。
 透は登校してきた滝澤の前に駆け寄ると、ペコリと頭を下げた。
 「滝澤先輩、お願いがあります。俺に力を貸してください!」
 「あれ、今日は土下座じゃないのか?」
 すぐさま唐沢が、にやにやしながら透の顔を覗き込んできた。
 確か以前も似たような事があった。前回のバリュエーションの翌日、同じ場所、同じタイミングで、透は唐沢に自身の非礼を詫びる為に土下座した。しかも昨夜も京極の前で頭を下げたばかりである。
 考え抜いた末に取った行動が毎度同じパターンである事に恥ずかしさを覚えたが、今更後には引けない。何としても自分に合った練習メニューを完成させて、今度こそレギュラーの座を手にしてみせる。その為にはワンパターンだと笑われたとしても、頭を下げるしか策はない。
 「あれだけ潔い土下座、滅多に見られないからさ。もう一回、やって見せてくれよ」
 調子に乗ってからかい続ける唐沢を、滝澤がやんわりと嗜めた。
 「こら、海斗。坊やで遊ばないの。こんなに一生懸命なのに、可哀想じゃない。
 第一、そろそろ思い余って相談に来る頃だって、自信ありげに話していたのは誰かしら?」
 「そうだっけ? ま、せいぜい可愛がってやってくれよ。俺の大事な育成馬だからさ」
 馬と同じ扱いをされて素直に喜べる心境ではないが、唐沢が気にかけてくれていたのは確かなようである。ほんの一瞬、透は唐沢に対して、口では何だかんだ言いながらも実は面倒見の良い先輩ではないかと、懲りない幻想を抱いていた。

 「今からミーティングだから、昼休みに部室まで来てくれる?」
 「分かりました」
 無事に滝澤との約束を取り付け戻ろうとする透に、唐沢が思い出したように声をかけた。
 「そうそう、お前の借金。昨日で二万九千五百円になったから」
 「なっ、なんで、そんなに増えているんですか?」
 「それがさ、今回もお前とハルキのルーキー対決があっただろ? 前回の対戦で味をしめた連中が、全員、ハルキに注ぎ込んじゃってさ。お前に賭ける奴なんか一人もいないし、もう、こっちは帳尻合わせるのに大変だったんだ。
 次回こそ頼むぜ、『ウ吉』君。奇跡の大逆転、期待しているよ」
 いつもながら悪びれる様子もなく、唐沢は校舎の中へと消えていく。
 「二万九千五百円……」
 前回のバリュエーションでも、唐沢は透に何の相談もなく金額を上乗せして借金を膨らませたばかりだというのに。その返済すらままならない状態だというのに。またしても彼は同じ手口で人の借金を勝手に増やし、透をレースから逃れられないようにしているのである。
 唐沢が透のことを気にかけていたのは、後輩の為を思うからではない。あくまでもディーラーとして、かけ金の均衡が保てるかどうかを心配していただけなのだ。
 基本的に前向き思考の透は、我が身を不憫に感じる事など滅多にない。しかしこの件に関しては、厄介な先輩に目を付けられた自分を哀れに思った。
 果たして、雪だるま式に増えていく借金を完済する日は来るのだろうか。
 「二万九千五百円……。マジかよッ!?」
 あまりの額の多さに目の前が真っ暗になった。中学一年生が背負うにしては、途方もない大金だ。
 だが、ここで落ち込んでなどいられない。せっかく掴んだチャンスを無駄にしない為にも、勝利を信じて進むしかない。
 「やるっきゃねえか……」
 透は口から漏れそうになった溜め息を飲み込むと、飄々と去り行く背中に向かってひとりごちた。

 昼休みの部室は、部活動で使用する時より閑散として広く感じられた。普段は三学年、総勢八十人近くが同時に出入りする場所に、たった二人きりでいるのだから無理もない。
 慣れた手つきでパソコンを操作する滝澤の傍らで、透は次々とプリントアウトされるトレーニングメニューの資料を手に取り、参考となる箇所に印を付けていった。同時に過去の自分のデータを滝澤にチェックしてもらいながら、ここに至るまでの経緯を出来るだけ分かりやすく説明した。
 自己流のトレーニング方法では成果が上がらないと気付いたこと。あらゆる角度から自己分析の必要性を感じたこと。今後、更なる力をつける為にも自分に合った練習メニューを見直す必要があると判断したこと。これらを一つ一つ順序立てて話していった。
 透の話を聞き終えた滝澤は、その長い説明を一言で片付けた。
 「つまり、坊やは壁にぶつかったって事よね?」
 「ええ、まあ……そんなところです」
 さすがは情報処理の専門家。その通りである。要するに、「壁にぶつかったので、助けてくれ」と言いたかったのだ。

 渡されたデータを見ながら、滝澤が最初に指摘したのは透の知識不足であった。
 「一口にメニューを作ると言っても、単に練習量と時間を増やせば成果が上がるものじゃない。それは分かるわよね?」
 「はい」
 「まずはトレーニングの種類、方法、効果。これらを正確に理解した上で、練習メニューに取り入れるかを判断する。これがメニュー作成の基本なの」
 滝澤は素人の透にも理解できるよう、必要な情報を絞り込んで解説していった。
 彼の分析によれば、透の弱点にして伸ばすべき箇所は筋力だった。人より秀でた身体能力を存分に活かす為の筋力が、まだ中学一年生の透には備わっていないという。
 続いて滝澤は、透が何となく感じていたバランスの悪さを数値として具体的に提示した。
 実際に過去のデータをグラフにしてみると、筋力を表す数値だけ極端に落ちている。パワーボールに苦戦する原因は、これを見れば一目瞭然だった。
 更に滝澤は、解決策としてウェイト・トレーニングとパワー・トレーニングを組み合わせる必要があると説き、現時点で導入可能だと思われるメニューをいくつかピックアップしてくれた。
 「筋力をつけると言うとウェイト・トレーンングを想像しがちだけど、それだけでは無意味なの」
 いくら筋力をつけようとしたところで、増加するトレーニング量に耐えられるだけの体力がなければ長くは続かない。筋力をつけるウェイト・トレーニングと、基礎体力を伸ばすパワー・トレーニング。この双方をバランスよく組み合わせなければ、効果は上がらないとの話であった。
 同様に、ウェイト・トレーニングも一箇所の筋肉を鍛えるだけでは効果はない。
 「例えばパワーボールを返す為に、腕や肩だけ鍛えても返せるものではないでしょ? それを支える下半身も連鎖的に鍛えなくては、いくら上半身を鍛えたとしても効果は出ない。何事もバランスが大事なの」

 滝澤の説明を聞きながら、透はトレーニングメニューの種類の多さもさる事ながら、選手の特性と目的によってその選択肢も変わるという事実を、改めて認識させられた。
 今までの自分はトレーニングに対する知識がなさ過ぎた。これでは遥希との差が開いていくのも当然の結果である。
 最後に滝澤は各トレーニングの負荷のかけ方と回数の算出方法を説明し、筋肉を鍛えた後は必ず丁寧にストレッチを行う事と、決して無理をしないよう念を押した。
 「成長期に過度なトレーニングは故障の元よ。それは坊やも分かっているわよね?」
 情報通の彼の事だから、透の父親がテニスから遠ざかった原因を知った上で仄めかしているのだろう。無理をすれば、父のようにテニスが出来なくなる危険もあるのだと。

 滝澤の指示のもと、一通り練習メニューの見直しを済ませた透は、この頼れる先輩を誇らしく思った。さすが「軍師・唐沢の知恵袋」と謡われるだけの事はある。豊富な知識と正確な分析力、合理的なプランの立て方はプロのトレーナーのようだった。
 「滝澤先輩、ありがとうございました。このメニューなら、成果が上がりそうな気がします」
 「坊やの場合は他の数値が高いから、ある程度、筋力がついてきたら、他の先輩達のプレーを参考にして体の使い方を覚えると、より効果が上がると思うわよ。
 例えば成田や海斗は荒木ほど筋力も無いし、体格差もあるけど、毎回上位の座をキープしている。彼等が勝つ為にどんな工夫をしているのか。今後の試合も、そこに注意を向けて観戦してみると良いわ。
 分からない事があれば、いつでもいらっしゃい」
 「本当にありがとうございます。俺、いつか必ずご恩返ししますから」
 「そう思うのなら、坊や自身が強くなること。それがテニス部の為だし、皆の為にもなるわ。
 そうだ、坊や? 貴方、竹を間近で見た事はあるかしら?」
 唐突な質問に透は首を傾げた。都会では珍しいかもしれないが、山育ちの透には野生の竹は身近な存在だ。
 「壁ってね、竹の節に似ていると思わない? 上を目指す過程で必ずぶつかるものだけど、そこを突破した後には次のステージが待っている。壁に突き当たるという事は、それだけ成長している証拠だと思うのよ」
 今まで壁をそんな風に捉えた事はなかったが、言われてみれば確かに成長の証とも取れる。成長しているからこそ壁に突き当たる。何もしない人間が壁にぶつかる事はない。
 どうにか壁を突破しようと、もがいていた気持ちが少し楽になった。
 「そうそう、坊やはその意気揚揚とした顔が似合うわね」
 「俺、そんなに暗い顔していました?」
 「ええ。落ち込んだ顔も母性本能をくすぐられちゃうけど、坊やは今の顔の方がス・テ・キ!」

 滝澤からのウィンクをまともに受けて、透は思わずのけ反りそうになった。目先の問題に気を取られ、すっかり忘れていたが、たった今、頼りになると誇らしく感じた先輩は“その手”の人種であった。
 ここまで世話になっておきながら、あからさまに顔を背けるのは礼儀に反すると思ってかろうじて両足で踏み止まったものの、視界に映る先輩からはメニュー説明をしていた時の理知的な印象は消え失せ、艶めかしい危険臭が溢れ出している。愛しい恋人でも見るような夢見心地の眼差しと、半開きの濡れた口元。それらが徐々に距離を詰めてくる。
 警戒心のまるで無かった入部当初とは違って、今はもう唐沢の言うところの「食われる」の意味が分かっている。こんな密室に二人きりでいるのだ。律儀に先輩、後輩の礼儀を守っていたら、漏れなく食われてしまう。
 透は一刻も早く危険地帯から逃れようと、急いで部室のドアノブに両手をかけた。その瞬間、背後から長い腕が伸びてきたかと思えば、無防備になった上半身ごと物凄い力で引き戻された。
 厳密には、抱き寄せられたと言った方が良いのかもしれない。透は滝澤に背後から身動き出来ないほど強く抱きすくめられていた。

 「あら、坊や? まだ話は終わっていないのよ」
 「た、滝澤先輩……俺、そろそろ行かないと……」
 恐怖のあまり、喉が貼り付いて声が出せなくなっている。
 昔から幽霊やおばけの類に恐怖を感じた事はない。もともと度胸はある方だ。山で熊に遭遇した時ですら、恐怖心は抱かなかった。
 しかし男を好む性別不明の先輩となると、話は別だ。自分には理解不能なアブノーマルな世界への扉が、無理やり開かれようとしている。
 正直、もう駄目だと思った。何が駄目なのか、良く分からないが、反射的に駄目だと思った。生きた心地がしなかったのだ。蛇に睨まれたカエルは、きっとこんな気持ちだろう。
 恐怖で固まる透の髪を、滝澤は優しく撫でていった。
 「今から坊やは螺旋階段を登ると思って、根気よくトレーニングを続けると良いわ」
 冷静に考えれば、早く会話を終わらせるべきだった。それにもかかわらず、透は聞き返してしまった。
 「は、はい?」
 「螺旋階段よ」
 「らせん……階段……?」
 滝澤のしなやかな指が透の髪に絡み付き、そこから徐々に首筋をつたって、頬へと移動した。もう顔を背ける事は不可能な状態だ。
 その上で彼は顔を近付け、声を潜めて囁いた。生温かい吐息が耳元にかかる。
 透の脳裏に地区大会での恐怖体験が鮮明に甦ってきた。
 「坊やが今まで登ってきたのは、初心者の誰もが通る直線階段。そして、いま差し掛かっているのは、真のプレイヤーだけに用意された螺旋階段。百段登って、やっと一段分の高さなの」
 いまだ体は硬直しているが、頭の中では恐怖が疑問符に変わっていた。怪しげな体勢はともかく、滝澤は透の為に大事な話をしてくれているのではないか。
 「螺旋階段はね、頂上はすぐそこに見えていても、その道のりは見かけ以上に長いものなのよ。だけど坊やが上を目指すと言うのなら、いくらでもサポートして、あ・げ・る!」
 その台詞と共に滝澤は再び透の耳元に生温かい息を吹き込むと、強烈なウィンクを残して去っていった。

 助かった。これが正直な気持ちであった。
 銀行強盗に拉致されて四十八時間ぶりに解放された人質のように、透は放心したまま動けなかった。気分は奇跡の生還を果たした漂流者か遭難者といったところか。普段使用している部室の中だというのに、平凡である事の幸せを噛み締める自分がいる。
 少し気分が落ち着いたところで、透はもう一度、滝澤の話を思い返した。
 今まで調子よく力がついたと思っていたのは、初心者用の直線階段を通っていたからだ。そして今後さらに上を目指すなら、螺旋階段を登らなくてはならない。
 百段登った成果がようやく一段の高さになって現れるという難儀な階段は、地味な努力と根気が必要とされ、そこを通り抜けた者だけがレギュラーの座を勝ち取れる。
 滝澤は「苦難の道だが頑張れ」と言いたかったに違いない。もっとまともな体勢で話してくれれば良いものを。あれは彼なりの照れ隠しか。あるいは、単におちょくられているだけなのか。
 いずれにせよ、この個性的なテニス部において、普通である事がいかに希少であるかを、透は今更ながら痛感したのであった。


 同じ頃、京極は昨夜の区営コートでの出来事を振り返り、なぜ自身があのような行動に出たのか。その理由をぼんやりと考えていた。
 確かに興味のそそられる少年ではあった。最初は自信なさげに話しかけてきたかと思えば、突然、必死の形相で土下座をし、コートに入ってからは物怖じせずに勝負を楽しんでいたかに見えたが、終了と同時に子供のように泣き出した。
 多分、あれは悔し涙だ。あの状況で泣くほど悔しがるという事は、彼は本気でサーブを返せると思っていたに違いない。ただの身の程知らずのバカなのか。あるいは――。
 物思いにふける京極のもとへ、チームメイトの越智がやって来た。
 「随分とご機嫌じゃない?」
 「そうか? ちょっと考え事をしていただけなんだが」
 「そうやって京極が腕組みしている時って、面白いものを見つけた時なんだよね。何かあった?」
 越智とは中学一年生から三年に渡る付き合いだ。京極のちょっとした仕草や表情の変化でこちらの考えが読めると見えて、彼はしたり顔で「早く話せ」と待ち構えている。
 「あのジャージは、確か光陵だったか……」
 「何年生? 名前は?」
 「聞いたが、忘れた」
 「何だよ。それじゃあ、誰だか見当のつけようがないじゃん。
 相変わらずだな、お前は。もう少し、他人に興味を持とうよ」
 こうした批判めいた発言が出来るのも、京極に次いでテニス部ナンバー2の実力を誇る彼だからこその特権だ。
 「面倒は嫌いなんだよ。ただでさえ、部長なんて面倒臭せえこと押し付けられてんだ。
 ただ、あのガキ……見ない顔だから一年生だと思うが、俺のフラット・サーブを四本目でラケットに当てやがった」
 その話を聞いて、越智の顔色が変わった。都大会連覇を狙う自校の一年生でさえ、現段階で京極のサーブをまともに返せる者は一人もいない。個人戦では全国を見据える男のサーブである。スピードに慣れるだけでも、ある程度の年月を要する。それをたった四本で当てるとは、只者ではないと判断したのだろう。

 明魁学園の情報収集を一手に引き受ける越智の頭脳から、あらゆる情報が引き出されていく。
 「ひょっとして、日高遥希じゃないの? 光陵の一年生に、日高コーチの息子が入部したって聞いたけど」
 「いや、あのタヌキ親父の息子なら知っている。何度かジュニアの大会で顔を合わせているからな。
 あのガキは見覚えもないし、この前の地区大会にも出場していなかった」
 「それじゃあ、後は考えられるとしたら、誰かの隠し球?」
 「恐らくな。成田か、唐沢か……」
 穏やかな口調とは裏腹に、越智の目つきが厳しくなった。
 「成田は、そんな胡散臭い事はしないでしょ。隠し球を持つとしたら、もう一人の方だよ」
 「唐沢か。あいつなら、やりかねない」
 「どうすんの? そんなに気に入ったのなら、うちに引っ張って来るかい?」
 「いや、もう少し様子を見てみよう。あのガキが本当に唐沢の隠し球なら、下手に手を出して奴を怒らせたら、後々面倒なことになる。
 それに俺の勘だが……」
 京極は腕組みしながら言い足した。
 「あのガキは、自分が認めたリーダーにしか従わない。そんな気がする。
 うちに引っ張るにしても、それなりの手順が必要だ」






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