あとがき

 「独りで見る夢は夢で終わる。だが、誰かと見る夢は現実となる」
 これはジョン・レノンの奥様だったオノ・ヨーコさんの名言なのですが、最初、私はこの言葉を文中に入れるかどうかで迷いました。今、現在、誰の力も借りず独りで夢を追いかけている人はどう思うかなぁと、考えてしまって。
 でも自分の辿ってきた足跡を振り返り、小さいなりに達成できた夢の数々は、決して独りの力で形になったものではない。「自力で頑張った」と思っていたけれど、後になってみると多くの方々に支えられていたし、何よりも夢を追いかけられる環境だったからこそ成し得た事であって、それはやっぱり周りの人達のおかげなんだと気付き、あえて将来プロになる夢を実現することになる成田に、この言葉を言わせる展開にしてみました。

 「誰かと見る」の部分は色々な捉え方があると思うのです。「仲間と一緒に協力する」とも「側にいる人に語って共有する」とも、あるいは、今申し上げたように「周囲の人達に感謝しながら」とも取れる。そうする事で頭の中の空想でしかなかった夢が色づいて、一歩ずつ実現していくのかなぁと。
 『輝』もおかげさまで三周年を迎えることが出来ました。それは私個人の力ではなくて、多くの方々に励ましていただいたり、教えていただいたりして、形になった事だと改めて思います。
 機械が苦手だという私に「いつでも聞いて」と声をかけてくださった方。更新をお休みしていると「具合悪いのですか?」と心配してくださる方。いつも励みになるコメントをくださる方や、学校や職場での出来事を楽しく聞かせてくださる方。そして最もありがたいのは、大河級に長くなった小説に文句も言わずお付き合いくださる読者の皆様!
 皆さんからたくさんの勇気をいただいて、ここまでやって来られたのだと思います。
 いつも同じ言葉になってしまいますが、本当にありがとうございます!この『荒木が喋った日』は、これまで『輝』に携わってくださった皆様へ、感謝の気持ちから書かせていただいた作品です。

 独りで見る夢は夢で終わる。だが誰かと見る夢は、現実となる。
 その「誰か」になってくださった皆さんへ、たくさんの感謝を込めて。

 2008年7月24日  宮城あおば


 追記:今回、藤原慎悟はまだ陸上部にいるという設定なので登場しませんでしたが、彼の話はまた後日。『軍師と勝負師』にて、すっかり性格の歪んだ唐沢の変わり様と共に楽しんでいただけたら幸いです。