ゆうくんのプレゼント


 白い光の似合う季節。
 夜に舞い降りた霜がちらちら、きらきら。

 こんな季節になると、君はいつも窓の外を眺めているね。
 まあるい瞳を空一杯に走らせて。

 大好きなサンタさんの季節だからかな。
 パパと同じくらい大好きな。
 でも、今年は少し元気がないみたい。

 「ゆうくん、今年はサンタさんにプレゼントのお手紙書かないの?」
 「うん……いいの。ぼく、がまんする」
 「どうして?」
 「だって、パパがたいへんになっちゃう」
 「パパが?」
 「ぼく、きいちゃったもん。
 ほんとうは、サンタさんはパパだって……たっちゃんが言ってたもん」

 まあるい瞳は空から急降下して、少し突き出た唇の上を行ったり来たり。
 ゆうくん、分かっちゃったんだね。
 大好きなサンタさんが、パパだって。
 本当はパパがクリスマス・プレゼントを買って来るって。

 「ゆうくん、何か飲む?」
 「うん」
 「ココア、それともホットミルク?」
 「ホットミルクがいい」
 「お砂糖は?それともハチミツにする?」
 「おさとう、いっぱいにして」

 いつもは二つだけど、今日は三つにしておくね。
 尖ったお口がこれで治ってくれると良いのだけど。

 「ママ、がっかりした?」
 「どうして?」
 「だって、ヒミツなんでしょ?
 パパがサンタさんって、すっごいヒミツなんでしょ?」
 「うん、そうだね」
 「だからね、パパもママもがっかりするとおもったの。
 だからね、だからね、ごめんなさい」

 いつの間にか君は、パパやママが考えるよりずっとお兄ちゃんになっていたんだね。
 周りの人の気持ちを考えられるぐらいに。
 本当はちょっと残念だけど、君には内緒しなくちゃいけないね。
 お兄ちゃんになった君を喜ばなくちゃいけないね。

 「だいじょうぶだよ、ゆうくん。
 パパもママもがっかりなんてしないよ。
 だって、ゆうくんがお兄ちゃんになった証拠だから」
 「ぼく、おにいちゃん?」
 「うん、お兄ちゃんだよ」
 「じゃあ、おてつだいできる?」
 「お手伝い……?誰の?」
 「パパのだよ。ほかにも、いっぱいプレゼントくばるんでしょ?」

 白い光の似合う季節。
 舞い降りた霜がちらちら、きらきら。
 まあるい瞳もちらちら、きらきら。

 「パパのおしごと、おてつだいできるかな?」
 「うん、そうだね」
 「ぼくね、そりにのりたいの。パパといっしょに、のれるかな?」
 「うん、そうだね」
 「トナカイさんにも、あえるかな?」
 「うん、会えるといいね」

 ママもサンタさんにお手紙書こうかな。
 大人のお願いも聞いてくれるかな。
 ママのお願いは一つだけ。
 どうか君の大好きな季節が、いつまでも変わらずにいてくれますように。
 きっとパパのサンタさんなら聞いてくれるよね、ゆうくん。